新・教育ジャーナル

教師や学校、最新の教育動向に関する記事です。

試験大好き教師には気をつけろ

 期末試験や入学試験、就職試験等は、学生にとって避けては通れないものですよね。多くの人にとって、それはストレスであると同時に、学習を行う上でのモチベーションにもなっているかもしれません。教師にとっても、試験は重要です。期末試験であれば、生徒の学習評価のために必要ですし、入学試験であれば、なるべく一人でも多くの生徒を希望する学校や仕事に就いてほしいと思うでしょう。このような試験に代表される、成績を決めたり、合格者を決めたりする評価のことを、総括的評価(Summative Assessment)と呼びますが、この種の評価を第一優先にして、生徒に学習指導を行っている教師には注意が必要です。
 試験の長所として、採点の公平性や再現性、試験官の主観の排除、他者との比較が容易等が挙げられ、効率的に選抜を行うのに適しているとして、19世紀の中ごろからイギリスを中心に大学入試等に活用され始め、そのシステムは世界中に拡大してきました。
しかし、その長所と同時に弊害も考慮する必要があることが、多くの教育評価の研究者が指摘しています(例えば、John White)。

 試験のマイナス要因として:その妥当性(Validity)が低いこと(生徒が、ある問題に正解したとしても、その生徒の学習理解が学習目標に達しているとは限らないこと)や:パフォーマンス志向(Performance Orientation)を強めること(他者に褒められることや、他人よりいい評価をもらうことが学習の目的化すること。※反対語は、学習志向(Learning Orientation)。パフォーマンス志向を持つ学習者は、学習への動機づけが弱く、学習意欲が低下しやすく、できる自分を保つために難しい問題にチャレンジしない等の問題点が研究で明らかになっている(Black&Wiliam))や:教師のストレスの増加(試験結果による、説明責任を求められる)や:授業の単調化(試験のための授業になり、一方的な知識の伝授や試験問題の演習が優先される。結果として、課題解決力や批評的思考力、主体性等の試験等では測ることが難しい力が軽視される)などが挙げられている。
 以上のような、試験志向がもたらす弊害を認識せずに、試験のために授業を行い、それに陶酔している教師は、教育に対する理解が欠如した失格教師かもしれません。

 

※ちなみに、混同しやすい概念としてテスト(Test)がありますが、試験とテストは分けて考えるべき概念です。試験(Examination)は、セレクション等のために計画的かつ画一的(同じ条件、時間等)に実施される必要がありますが、テストは、学習状況等を把握するために授業中などに日常的に行われているものも含みます。そのため、テストが必ずしも、試験のように計画的かつ画一的に実施される必要はありません。

 

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