新・教育ジャーナル

教師や学校、最新の教育動向に関する記事です。

マニアックな教師に気をつけろ

  いろいろなことを知っている先生は魅力的ですよね。しかし、教科についてのマニアックな知識をもち、授業の中で、自らの知識を披露することに酔いしれている教師には注意が必要です。当然、教師には専門知識が必要です。とりわけ、自らの担当する教科(数学や英語、音楽等)については十分な理解と知識がないと子どもたちに教えられません。その点において、マニアックな知識を持っていることは否定されることではありません。しかし、ただ単に知識があることがよい授業を行う教師の条件ならば、その専攻科目についての研究者(大学教授等)が授業を行えば、誰よりもよりよい授業ができるということになります。でも、大学等で講義を受けたことがある人は良くわかると思いますが、彼らの授業は決して学習者にとって理解しやすい、楽しい授業ではありません。また、英語学習において英語ネイティブに教えてもらった人が、日本がネイティブの人に教えてもらった場合より英語習得の達成度が高まるとも限りません。つまり、よりよい授業を行う教師には、教科の知識があるということだけでは不十分なのです。にもかかわらず、自らの知識や経験の豊富さを過剰にアピールする教師は、教師の専門性(教師がよりよい授業を行うために必要なもの)をはき違えている、失格教師といえるでしょう。
 では、合格教師とはどのような教師なのでしょうか。ここでキーワードとなるのが、Pedagogical Content Knowledge (PCK)と呼ばれる、教師が身に着けるべき特有の知識です。これは、1985年にショーマンがアメリカで提唱した概念です。教師には、各教科内容についての知識(内容の知識)に加え、それをどのように教えるのかということについての知識(教授法の知識)が必要になります。先にも述べたように、教科知識がある人が上手な授業ができるとは限らない一方で、上手な話し方で子どもの興味を引いたり、きれいな色遣いで黒板を書いたりするのが得意な教師でも、教科内容を知らなければそれを教えることはできません。つまり、教科の内容と教授法の知識、2つが揃って初めて、教師の専門性が成立し、合格教師となり得るのです。
 以上のようなことを踏まえて考えたとき、教科内容についての知識のみをマニアックに追求して、その知識を自慢するような教師には注意が必要です。